コラムcolumn
なぜ管理職の行動変容は起きないのか?~研修をしても変わらない理由と「ためになった」で終わらせない管理職育成の考え方~
なぜ今管理職の「行動変容」が求められるのか
近年、多くの企業で「管理職育成」が経営課題として取り上げられています。
背景にあるのは、単なるスキル不足ではなく、管理職の“あり方”そのものが時代と合わなくなってきているという現実です。
かつての管理職は、
・指示を出す
・進捗を管理する
・成果を評価する
といった役割を果たすことが求められていました。
しかし、現在の組織環境では、それだけではチームは機能しません。
組織環境の変化と管理職への期待の変化
事業環境の変化が激しい現代において、管理職に求められる役割は大きく変わっています。
・メンバー一人ひとりの主体性を引き出すこと
・多様な価値観や働き方をまとめること
・正解のない状況でも、現場で判断し、動かすこと
これらは、単に知識やノウハウを身につければできるものではありません。
管理職自身の考え方・行動のクセ・関わり方が問われる領域です。
「指示を出す人」から
「人と組織を動かす人」へ。
役割が時代とともに変化しているにもかかわらず、管理職本人の行動が変わらなければ、組織全体の変化も起こりにくいのが現実です。
特に近年は、
・若手社員の価値観の多様化
・心理的安全性への注目
・ハラスメントの社会課題化
・リモートワークによるマネジメントの難化
などにより、管理職の影響力はこれまで以上に大きくなっています。
行動が変わらない管理職が組織に与える影響
管理職の行動が変わらないままだと、組織にはさまざまな影響が広がっていきます。
まず顕著なのが、部下が育たないという問題です。
管理職が従来型の指示命令スタイルから抜け出せないと、部下は「考える機会」を奪われ、自律的に動けなくなります。
また、
・失敗を恐れて挑戦しなくなる
・意見を言わなくなる
・上司の顔色をうかがうようになる
といった状態が生まれやすくなります。
結果として、
「若手社員が定着しない」
「現場が動かない」
「変革施策が定着しない」
「人事施策が形骸化する」
といった課題につながっていくのです。
管理職の行動変容が起きない“よくある理由”

多くの企業で管理職育成に取り組んでいるにもかかわらず、
「期待したほど変化が見られない」
という声が後を絶ちません。
実際、管理職本人に話を聞くと、
「変わらなければいけないのは分かっている」
「でも、どう変えればいいのか分からない」
と感じている方が非常に多いのです。
行動変容を阻んでいる壁は、本人のやる気不足ではありません。
意識改革だけで終わっている
行動変容とは、一時的に行動が変わることではなく、新しい行動が継続する状態を指します。
しかし多くの管理職研修では、
「マインドを変えよう」
「意識を高めよう」
といったメッセージで終わってしまうケースが少なくありません。
意識は、行動を変えることで初めて強化されるものです。
行動の変化を伴わない意識改革は、時間が経つと元に戻ってしまいます。
管理職本人が「変わる理由」を腹落ちしていない
「なぜ自分が変わる必要があるのか」
この問いに対して、管理職本人が納得できていない状態では、行動変容は起こりません。
・会社から言われたから
・評価に影響するから
といった外発的な理由だけでは、行動は長続きしないのです。
自分の役割、チームへの影響、組織の未来と結びついた形で、
「自分ごと化」できているかどうかが重要になります。
行動を振り返る仕組みがない
研修直後は意識も高まり、「やってみよう」と思えても、
日常業務に追われる中で、人は元の行動に戻ってしまいます。
これは意志が弱いからではなく、人間の自然な反応です。
だからこそ、
・行動を記録する
・振り返る
・フィードバックを受ける
といった仕組みが不可欠なのです。
行動変容が起きた管理職に共通する特徴
これまで多くの管理職と関わる中で、行動変容が起きた方にはいくつかの共通点があります。
自分の行動を客観視できている
感覚や思い込みではなく、「実際に何をしているか」を見つめ直せている。
フィードバックを受け取れている
耳の痛い意見も含め、成長の材料として受け止められている。
小さな行動を積み重ねている
一気に変えようとせず、できることから少しずつ行動を変えている。
これらは特別な能力ではなく、向き合い方の違いに過ぎません。
管理職研修を「成果につなげる」ために人事・経営ができること
研修を単発で終わらせない設計
研修前後のフォローや、実践の場を組み込むことが重要です。
すぐに取り入れられる実践例
<研修前>
・研修前の動機付けとして、上司からのメッセージを伝える
・研修開始時に「持ち帰りたいこと」を設定してもらう
<研修中>
・実践的なワークを取り入れる
・日々の業務の中でどのように活かすかを考えてもらう
・研修中に具体的なアクションプランを決定してもらう
<研修後>
・研修後1週間以内に人事からのフォローを入れる
・参加者同士の「共有タイム」を設け、やってみたこと/うまくいかなかったことをシェアする機会を設ける
・「成果」ではなく「試したこと」を聴く振り返りの場を設ける
行動変容を前提にした育成設計の重要性
「何を学ばせるか」ではなく、「どんな行動を変えたいか」から逆算する育成が求められます。
すぐに取り入れられる実践例
・研修を通して「変えたい行動」を具体的に設定する
NG:「マネジメント力を高める」
OK:「会議で部下に1回は発言を促す」
「月1回、行動事実に基づいたフィードバックをする」
・研修後にアクションプランを設定してもらう
・研修後に振り返りをし、必要に応じて設計を見直す
まとめ:管理職の行動変容は「設計」で決まる
管理職の行動変容は、
・意識だけでなく行動に落とす設計
・仕組みとしての継続
・周囲の関わり
によって左右されます。
変わらないのは、管理職本人のせいだけではありません。
育成の設計そのものが問われているのです。
弊社エヴリックの管理職向け研修では、集合研修と1on1コーチングを組み合わせたプログラムにより「行動が変わった」「部下との関係が良くなった」等、なんらかの行動変化があったと答えた受講者が9割を超えています。
理論だけで終わらない、“現場の行動を変える再現性のある仕組み”が評価されています。
この記事の筆者
株式会社エヴリック シニアコンサルタント
青木 早智子
大学卒業後、ベネッセグループのコールセンター運営会社である株式会社テレマーケティングジャパン(現・セコムグループ 株式会社TMJ)に入社。コールセンターのSV(スーパーバイザー)やQA(品質管理)職を経験した後、2010年より人材開発部門へ異動し、約12年間にわたり社内研修の企画・開発・実施に従事。これまでに延べ1万人以上の従業員に対して研修を実施する。
自身がキャリアに悩んだ経験をきっかけに、2014年にコーチング資格を取得。さらに2019年には国家資格キャリアコンサルタントを取得し、社内外においてキャリアカウンセリングやコーチングを行う。
現在は株式会社エヴリックのシニアコンサルタントとして、若手社員から管理職まで幅広い階層を対象とした研修・人材育成支援に携わっている。
【保有資格】
・国家資格 キャリアコンサルタント
・国際コーチング連盟(ICF)認定アソシエイトコーチ(ACC)
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