コラムcolumn
女性管理職比率はなぜ伸び悩むのか――現場で起きているリアル 「私には向いていないので…」 女性社員が管理職を辞退する本当の理由
近年、多くの企業で「女性活躍推進」が重要な経営テーマとして位置づけられています。
2026年4月からは、従業員101人以上の企業を対象に、「女性管理職比率」の公表が義務化されます。
これにより、女性リーダー育成は“取り組んだほうが良いテーマ”ではなく、企業として向き合うべき経営課題の一つになりつつあります。
実際に、女性管理職比率の向上を目標に掲げ、研修制度の整備やキャリア支援施策に取り組む企業も増えてきました。
政府も女性活躍推進に関する目標を掲げており、企業に求められる役割は今後さらに大きくなっていくでしょう。
一方で、現場ではこのような声を耳にすることがあります。
「管理職候補として期待している女性社員が、昇進を辞退してしまう」
「能力は十分あるのに、“自分には向いていない”と言われる」
「次世代リーダー候補がなかなか育たない」
人事担当者や現場上司にとって、こうした状況は大きな悩みの一つではないでしょうか。
もちろん、管理職というキャリアを選択するかどうかは、本人の意思が尊重されるべきものです。しかし、その背景を丁寧に見ていくと、単なる「本人の意欲」だけでは説明できないケースも少なくありません。
本記事では、女性社員が管理職に対してためらいを感じる背景を整理しながら、組織としてどのような育成や関わりが求められるのかについて考えていきます。
女性社員が管理職をためらう背景とは
女性社員が管理職への打診を断る場面では、
「自分にはまだ力不足です」
「管理職に向いているタイプではないので…」
といった言葉が聞かれることがあります。
そのため、「女性は昇進意欲が低い」「自信がない傾向がある」と捉えられることもあります。
しかし、実際に研修やキャリア面談の場で話を聞いていると、その背景は決して単純ではありません。
例えば、
・管理職が非常に忙しそうに見える
・責任やプレッシャーが大きそう
・家庭やプライベートとの両立が難しそう
・身近にロールモデルが少ない
・“管理職らしさ”に自分が当てはまらないと感じる
など、さまざまな不安や価値観が影響しています。
特に近年は、管理職層の業務負荷そのものに課題を感じている社員も少なくありません。
上司が日々忙しく働く姿を見て、「あの働き方を自分が続けられるだろうか」と不安を抱くケースもあります。
また、真面目で責任感の強い人ほど、「十分にできる状態になってから挑戦したい」と考える傾向があります。
・周囲に迷惑をかけたくない
・失敗したくない
・期待に応えなければならない
という思いが強いからこそ、「まだ自分には早い」と感じてしまうのです。
しかし実際には、管理職に必要な力の多くは、“なってから”経験を通じて身についていくものでもあります。
最初から完璧にできる人はいません。小さな挑戦や経験を重ねながら、自信や視座を育てていく。
そのプロセスを支えることが、これからの女性リーダー育成において重要になっていくのではないでしょうか。
一方で、こうした状況は本人の意識だけで生まれているわけではありません。
実は、組織側の関わり方や育成環境が影響しているケースも少なくないのです。
「配慮」が成長機会を減らしてしまうこともある
女性リーダー育成について考える際、私自身が現場で感じるのは、「本人の意欲」だけでなく、周囲の関わり方も大きく影響しているということです。
特に現場では、女性社員に対して“配慮”が優先される場面を少なくありません。
例えば、
・負荷が高そうな仕事は任せない
・出張や異動の打診を控える
・難易度の高いプロジェクトから外す
・厳しいフィードバックを避ける
こうした関わりは、本人を思っての善意であるケースがほとんどです。
しかし一方で、その「配慮」によって、結果的に成長機会が減ってしまうこともあります。
実際に、キャリア面談の場で女性社員から、
「気づいたら、チャレンジの機会が男性社員に偏っていた」
「“無理をさせないように”と言われたが、本当は挑戦してみたかった」
という声を聞くこともあります。
もちろん、すべてを一律に任せればよいという話ではありません。
本人の状況や価値観を尊重する視点は欠かせないでしょう。
ただ、「配慮すること」と「期待をかけないこと」は別です。
むしろ、「挑戦してみないか」「あなたならできると思っている」と期待を伝えられることによって、自分の可能性を前向きに捉えられるようになる人も少なくありません。
また、女性管理職育成が進んでいる組織では、“いきなり管理職”ではなく、小さなリーダー経験を積ませているケースが多く見られます。
例えば、
・後輩育成を任せる
・小規模プロジェクトのリーダーを担当する
・会議のファシリテーションを経験する
・他部署との調整役を担う
など、段階的に経験を広げていくのです。
こうした経験を通じて、「自分にもできるかもしれない」という感覚が育まれていきます。
女性リーダー育成において重要なのは、自信がつくのを待つことではなく、経験を通じて自信を育てていくことなのかもしれません。
「自分には向いていない」を書き換えるために
では、女性社員が管理職を前向きな選択肢として捉えられるようになるためには、どのような関わりが必要なのでしょうか。
研修やキャリア支援の現場で感じるのは、“自分なりのリーダー像”を描けるよう支援することの重要性です。
例えば、1on1などの対話の中で、
「どんな働き方であれば挑戦してみたいと思えるか」
「どのようなリーダーでありたいか」
を一緒に整理していくことで、「管理職=自分には合わないもの」という固定的なイメージが少しずつ変化していくケースがあります。
また、管理職やリーダーシップについて学ぶ機会を持つことも有効です。
管理職というと、
・厳しく指示を出す人
・常に強く引っ張る人
・完璧にこなせる人
というイメージを持っている方も少なくありません。
しかし実際には、リーダーシップにはさまざまなスタイルがあります。
メンバーの話を丁寧に聴く力、周囲を巻き込む力、安心して相談できる関係性をつくる力なども、組織において重要なリーダーシップの一つです。
「自分らしいマネジメントのあり方」があって良いと知ることで、管理職を“特別な誰かがなるもの”ではなく、“自分にも可能性があるもの”として捉えられるようになる人もいます。
女性リーダー育成においては、単に昇進を促すだけではなく、「自分らしく挑戦できるイメージ」を育てていくことが重要なのではないでしょうか。
まとめ(次回予告)
女性管理職比率の向上は、制度を整えるだけで実現するものではありません。
女性社員本人の「自信」や「意欲」の問題として捉えるのではなく、これまでどのような経験機会が与えられてきたのか、どのような管理職像を見てきたのか、そして周囲がどのような期待や関わりをしてきたのかを、組織として見つめ直していくことが重要です。
特に、これからの女性リーダー育成においては、「自信がついてから挑戦する」のを待つのではなく、小さな挑戦や対話を通じて、“自分らしいリーダー像”を育てていく視点がますます求められていくでしょう。
そのためには、人事制度や研修だけではなく、現場で日々関わる上司の存在も欠かせません。
では、女性社員の挑戦を後押しするために、上司はどのような1on1や関わりを行うとよいのでしょうか。
次回は、女性リーダー育成を支える現場マネジメントのあり方や、挑戦を促すコミュニケーションのポイントについて考えていきます。
筆者プロフィール
株式会社エヴリック シニアコンサルタント
青木 早智子
大学卒業後、ベネッセグループのコールセンター運営会社である株式会社テレマーケティングジャパン(現・セコムグループ 株式会社TMJ)に入社。コールセンターのSV(スーパーバイザー)やQA(品質管理)職を経験した後、2010年より人材開発部門へ異動し、約12年間にわたり社内研修の企画・開発・実施に従事。これまでに延べ1万人以上の従業員に対して研修を実施する。
自身がキャリアに悩んだ経験をきっかけに、2014年にコーチング資格を取得。さらに2019年には国家資格キャリアコンサルタントを取得し、社内外においてキャリアカウンセリングやコーチングを行う。
現在は株式会社エヴリックのシニアコンサルタントとして、若手社員から管理職まで幅広い階層を対象とした研修・人材育成支援に携わっている。
【保有資格】
・国家資格 キャリアコンサルタント
・国際コーチング連盟(ICF)認定アソシエイトコーチ(ACC)
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